OKAMOTO'S『No more music』(2017)


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OKAMOTO'Sの7枚目。

 

初期の衝動的な60'sロック臭はなりをひそめ、ダンスチューンが多い。

 

もちろん発売メディアはCDなのだが、レコードを意識した作りになっており、全般はヴォーカルのオカモトショウ作曲中心の、比較的ヒップホップ的なファンクナンバーが並ぶ。レッチリっぽいっちゃあレッチリっぽい。

 

後半はギターのオカモトコウキの曲が中心で、80'sな極上のポップスが続く。

 

 

とにかく全曲良く、捨て曲がない。

また、前半はとにかく格好いい曲が続き、後半はとにかく楽しい曲が続く。メリハリがあり、何度聴いても飽きない構成。

 

演奏的には割とみんなフツーだと思うけと、ハマ・オカモトのベースカ圧倒的に上手いので、音楽としての説得力が増す。

 

7曲目の「Wendy」は、作曲がオカモトコウキだから、リードヴォーカルも本人なのかな?結構癖があるけど、音楽に合った声。

 

ラストの「Star light」でも歌い分けしてる。

この曲が秀逸で、イントロ~Aメロはハードなヨコ乗りでこのアルバムの前半を表し、Bメロ以降はとても楽しいポップスに変わる。

 

アルバムの作風を1曲に収めた秀曲。

 

発売当時メンバーはまだ26歳くらいとのこと。

そろそろ出る新譜が楽しみ!今後に期待な本格派バンド。

 

HELL FREEZES OVER『Speed metal assault』(2018)


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東京を中心に活動している若手メタルバンドの初CD(EP)。

 

音楽的には初期メタリカを彷彿とさせるスラッシュメタル

本作録音時には正規のドラマーが居なかった模様で、元ANTHEMの大内MADがヘルプ参加(現在はメンバーと同世代=20代半ばのドラマーが正式加入)。

 

もっとも、本人達は「スラッシュメタル」のカテゴライズには不服の模様。

確かにスラッシュメタルよりもメロディアスかつオーセンティックなメタルサウンドなので、まぁわかるっちゃあわかる。

アルバムタイトルも『スピードメタル~』だし。

 

バンドとしての特徴は…………なし!まったくなし!

「メタル」の一言に尽きる。

 

しかし彼等にとってはこれが最高の褒め言葉で、とにかく「俺達が好きで好きでしょうがないあのヘヴィメタルを演っている」感しかない。

 

 

収録の全4曲とも、何処かで聴いた風なのに、確かなオリジナリティを感じるリフ・ソロ・メロディがそのセンスの良さと作曲の丁寧さを伺わせる。

 

単調なメタルに見せかけて、実は気が付かない程自然に複数の展開がある。故に何度聴いても飽きが来ない。

 

 

演奏技術的には特別上手いという訳ではなく、多少速い刻みとライナーにある「Old school Marshall amps」さえあれば再現は出来る曲だが、どれだけ演奏技術があっても「俺はメタルが好きだ!」の精神がないと絶対に出し得ないサウンド

 

メタルに限らず全ロックファンに対して、忘れかけていたあの頃の衝動を思い起こさせてくれる青春盤。

 

オフコース『We are』(1980)


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オフコースの8枚目。

 

考えてみるとこのブログでは日本のバンドばっかりやってる気がするな。

でもさ、日本の音楽、良いよね。

 

シングルは「時に愛は」と「Yes-No」。

 

小田和正のソロになってからの曲はあの風貌や喋りとも相まって、なんとなくジジ臭いポップスに感じるんだけど、オフコースは最高に洗練されたシティポップ/AORだと思う。

 

最近欧米のマニア界隈で日本の70年代~80年代シティポップが注目されてるらしいけど、大瀧詠一とか山下達郎のファミリーツリーから外れたオフコースなんかはどういう扱いなんでしょ?(ゴダイゴとかSHO-GUNも)

 

 

「時に愛は」「僕等の時代」は美しいメロディーのオフコースらしい曲。

 

4曲目の「あなたより大切なこと」はタイトル通り、恋人と決別する決意を音にしたようなダイナミックなギターとソリッドなピアノが印象的。

 

7曲目の「せつなくて」は誰がリードヴォーカルなんだろ?誰が誰だかよく知らないんで…。

男らしい声で、かつ上手い。やっぱりコーラスがきれいなバンドだからみんな歌自体が上手いんだろうか。

 

フェイドアウトの後、一瞬の間を置いて超名曲「Yes-No」へ。

イントロのシンセだけで悶絶。ギターソロもめちゃめちゃ格好いい。思わずコピーしました。

 

最後は「私の願い」~「きかせて」で小田さんセンチメンタルに締め。

 

かつての日本にはこんなにハイレベルなシティポップバンドが居たんですね…。

エレファントカシマシ『明日に向かって走れ-月夜の歌-』(1997)


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エレファントカシマシの9枚目。

バンド最大のヒットシングルである「今宵の月のように」が収録されたアルバム。

 

 

初めて聴くエレカシ

 

 

ずっと「良いんだろうな」と思いながらなんとなく縁がなく触れずに過ごして来たエレカシ

 

 

「男の哀愁を歌うバンドなんだろうな」と思ってたエレカシ

 

 

 

違った…。

男の哀愁と、熱い熱い想いを歌うロックバンドだったエレカシ!!!

 

 

沁みるなぁ。宮本さんのぶっきらぼうな歌い方と、ひたすらに真っ直ぐな歌詞。演奏面ではこれといって特筆すべき点はないけど、叩き上げらしい安定感のあるサウンド

 

全体として、日本のフォークソングが好きな人なのかなという印象。

自身の想いを率直に歌にし、牧歌的なメロディーを60~70年代ロック的なバンドサウンドと結構な高いキー&絶唱で一段上の音楽に仕立て上げている。

 

オープニングからの3曲「明日に向かって走れ~戦う男~風にふかれて」はまさに男の想いと哀愁を歌い上げるナンバー。

 

6曲目の「せいので飛び出せ!」なんかはストーンズ直系のシンプルなロック。渾身の想いで絶唱するタイプの宮本さん、当然こういう曲も合う。

 

最後の「月夜の散歩~恋人よ~今宵の月のように」はアルバムのサブタイトルにある『月夜の歌』を象徴する3曲。

 

「月夜の散歩」はアコースティックギターとヴォーカルだけで切々と歌い上げる。

 

「恋人よ」「今宵の月のように」は、バラード調とまではいかないまでも、スローテンポで情感溢れるバンド曲。

 

正直、最後が「今宵の月のように」ってのはちょっと狙い過ぎでは?と思わなくもないけど、そんな邪念をすべてぶっ飛ばす説得力を持つのが宮本浩次という人の凄みなのだろう。

 

いやぁ、俺もエレカシがわかる年齢になってきたってことか…。

 

吉田拓郎『元気です。』(1972)


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吉田拓郎の代表作。かの有名な「夏休み」や「旅の宿」が入ってるアルバム。

 

吉田拓郎って初めてまともに聴いた。

もっと辛気臭いフォークソングかと思ってたけど、結構軽快にオルガンなんかも鳴ってて思ったよりディランっぽい。

 

若さ全開にシャウトしてる曲もあるし、とにかく曲が良い。

ポップでキャッチーで、聴けばすぐ口ずさめる。

 

あと演奏も、「売れ線狙いでバックバンド付けました」的なものかと思ってたけどちゃんと格好いい……と思ったら参加ミュージシャンが松任谷正隆、だの林立夫だの後藤次利だの……。

恐るべし70's。

 

「春だったね」「加川良の手紙」「高円寺」「旅の宿」など、印象的な曲はあるが、アルバム通して良曲揃い。

 

今時のガーリーなJ-POPではよく「等身大の~」なんて説明がされるけど、単なる現状報告に4分弱が費やされる「加川良の手紙」以上に等身大な曲なんてないんじゃないのかしら。

 

名曲揃いの素晴らしいアルバムでした。

 

キリンジ『Fine』(2001)


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本日は兄弟時代のキリンジ、メジャー4枚目のアルバム。

 

「ムラサキ☆サンセット」「雨は毛布のように」「太陽とヴィーナス」「Drifter」がシングルかな?

 

前作『3』に引き続き、とてもゴージャスなポップスアルバム。

一部「ポップコーン」みたいなシンプルロックもあるけど、基本的にはジャジーでアダルトで、とても美しい作品集。

 

キリンジ史上もっとも夜が似合うアルバムなのでは。

インストの「燐」も怪しげでラウンドミッドナイトな雰囲気を醸し出す。

 

「雨は毛布のように」。コーラスはaikoらしい。ハマり過ぎてて気付かん。

 

「地を這う者に翼はいらぬ」。たまらんタイトルだ…。

 

「Drifter」。単体で聴くとあまり面白味のない平坦なバラードに思えるんだけど、このアルバムの中で聴くと非常に説得力を感じ、揺るぎない愛と希望を歌った完全無欠の名曲だった事に気付かされる。泣くわこれ。

 

「Music!!!!!!!(←!7個)」はソウルフル&グルーヴィで最高に格好良くアルバムを締める。

 

もちろんシングル以外の曲もみんな良い。(キリンジはだいたいそうですね)。

やっぱりキリンジ冨田恵一プロデュース時代が好みだなぁ~。

 

踊って、しっぽり落ち着いて、最後はまた踊って締めるジャジーかつソウルフルな名盤。

 

 

 

KIRINJI『愛をあるだけ、すべて』(2018)


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KIRINJIの新譜。

Keyのコトリンゴが抜け、5人体制でのアルバム。

 

とは言っても、徐々にエレクトロ色を強めるキリンジ(兄弟)サウンドについて行けなかった私はキャリア後半のアルバムはほとんど聴いておらず、KIRINJI(バンド)になってからのアルバムは初聴。

 

メンバーの脱退という、一般的にはマイナス要因を経て制作されたこのアルバム、ひとことで言うと「マジ傑作!」です。

 

初期とは全く異なる音色、でも変わらないどこか疎外感のあるアーバン感…。

自分が地球外の生き物であるとさえ自嘲するこの孤独感、ある種キリンジ/KIRINJIってハードボイルドなんでは、とも思う。見た目は全然違うけどね。

 

 

曲は1曲目の「明日こそは/It's not over yet」から最高で、とにかくかっこいい。

太いギターにブラスが重なりグイグイ来ながら、でも洒落てて、捕らえ所のないクセになるメロディー。

 

2曲目の「AIの逃避行」はCharisma.comが参加。この曲に限らず、現代のポップスにおいてはラップとかヒップホップの要素って避けては通れないんだなぁ、と。

 

個人的なイチ押しは3曲目の「非ゼロ和ゲーム」で、タイトルの意味はよくわからないです。歌詞でも「調べろ」→「ググれよ」→「辞書見て」→「わかんない」って言ってるし…。

 

一度聴くと耳から離れない謎メロディー。

 

以降も他メンバーのヴォーカル曲含め、良曲目白押しの駄曲なし。

 

打ち込み(死語?)サウンドは増えつつ、バンドとしてのダイナミックさやグルーヴ感も失わないKIRINJI…そしてメジャーデビュー20年にしてこれだけの曲を書き続ける堀込兄…恐るべし……。