Mr.Children『深海』(1996)


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ミスチルですよ、ミスチル

私もメタルとかプログレとか聞き始める前は好きでしたよ、ミスチル

 

このアルバムも聴いてたけど、今あらためて聴くとなかなか硬派でいいです。

 

シングルは「名もなき詩」(特大ヒットでしたね)、「花-Memento mori-」(これもヒットでしたね)、「マシンガンをぶっ放せ」(マキシシングルでしたね。マキシシングルって半端じゃない死語感ありますね。)。

 

当時のミスチルのパブリックイメージからは意図的に乖離した作風で、ジャケットからしてまず陰鬱。

急降下し始めた平成の日本を憂いてか、はたまた桜井氏の内在的なパーソナリティかは知らないけど、とにかく社会への違和感を全開に吐き出した曲が目立つ。

 

オープニングSEの「Dive」から「シーラカンス」が始まり、暗いアコギ&ヴォーカルからヘヴィに歪んだギターが精神不安を煽る。そして後半は急にピンクフロイドに。(吹けよ風呼べよ嵐)

 

手紙~Mirrorの3曲は当時のミスチルらしい純粋に良い曲。(Mirror良いね~)

 

名もなき詩」は正直なところ、ずば抜けて良い曲過ぎるのでちょっと浮いてる。しかしアルバム中盤の推進力としては圧倒的な存在感。

この頃のミスチル(というか桜井氏)のノリにノった才能に畏れおののく。

 

「So let's get truth」はディラン(含、歌い方)、「臨時ニュース」はテレビのザッピング音をサンプリング、「マシンガン~」は社会への怒りにマシンガンをぶっ放すという何のひねりもない曲。ひねったのは何故か「マキシシングル」という発売形態。

 

「ゆりかごのある丘から」はスローで穏やかな曲調の、しかし愛を裏切られた男のお話。

前半のポップ曲では朗らかに恋を歌っていたが、対をなすものとして次の「虜」と共に男女の脆さと不条理さを歌う。

 

 

 

社会に対しても男女に対しても、フラストレーション溜まりすぎじゃないこの人…?

 

 

 

「花~」でちょっとだけ希望を歌うも、ラストの「深海」で「深海へ連れてって~」と終わる……ダメだこの人。

 

でもその「深海」というのもまたひとつの希望で、周りを気にするのではなく、深い海の底で自己を見つめる事もまた強さなのでは?という意思表示を感じる。

 

音楽的には序盤の「シーラカンス」と同じ音なので、なんとなくコンセプト作っぽい雰囲気で終わる。実際には音楽的に近しいのはこの2曲くらいだから、ガチガチのコンセプトアルバムじゃあないんだけど、「ミスチルらしからぬヘヴィなアルバム」を印象付けるのは充分かと。

 

ポップセンスが爆発している中にありつつ、敢えて陰鬱な世界を意識した事で良質なロックアルバムに。ミスチル食わず嫌いの人にも是非。