『騎士団長殺し』村上春樹(2017)


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村上春樹の最新書き下ろし長編。

刊行は2017年だが、前長編にあたる『色彩をもたない多崎つくると彼の巡礼の旅』がトラウマ級につまらなかったため購入を見送っていたものの、廉価な文庫版発売を機にようやく手を出す。

 

2月末の第1部文庫版発売と同時に購入→2日で読み終える→1か月後の第2部文庫版発売まで待てず、単行本で買い直し

 

という壮大なストーリーのもとに読了。

 

 

結果的には、

「ラストの尻すぼみ感は残念だが、全体的には概ね楽しめる。村上作品としてはまずまずの佳作。」

といったところ。

 

ストーリーはいつも通り。

 

ジャズや古典音楽や文学を愛する、今ひとつ社会に馴染めない30代の画家が人里離れた家屋で大して働きもせず独りのんびりと毎日を過ごすも、些細に思えた不思議な出来事から日常と非日常の狭間に呼び寄せられ、受動的に物事を進めていく内に喪失と自己認識の発見をし、何となく事件が解決する。

 

というもの。

 

ストーリーはいつも通りだが、組まれた設定やプロット、登場人物がこの上なく魅力的で、作家としての技量アップを見せつけられる。

とりわけ謎めいた、しかし限りなく常識的一般人である免色(メンシキ)氏との微妙な友人関係の進捗が魅力。

今までも主人公には魅力的な男性友人は居たが(鼠、五反田くんなど)、その中でもかなり謎めいた魅力を放つ部類。

 

女性達に関しては割と軽いというか、記号としての存在しかない。1Q84でもそうだったけど、春樹は女性はもう記号的にしか扱わない事にしたのかな?(昔からではあるが、より顕著)

 

反面ローティーンの女の子に関しては今回もキーパーソンとして描く。最後の投げやり感も同じ。途中退場こそしないけど、かなりいい加減な帰結に感じた。

 

少女の神秘的な力を物語の推進力にはするんだけど、少女というものがわからないが故にどんなゴール(=成長)に持って行けばいいのかわからないのだろうか。

 

個人的にはやはり本作の裏主人公は免色氏に感じる。すべてを持っていながら究極の持たざる男である免色氏を主人公の表裏として描いている。

 

そんなに面白い設定にも関わらず最後が全てを投げ出したようないい加減なエンディングなのが残念。締切だったのかな…?(無いだろうけど)

 

全体としてはとてもワクワク楽しめるので、今後も気のくままに適当なページを開いて読んでいきそう。